親知らずの抜歯座談会
親知らず抜歯のお悩みに回答する
歯科医師のご紹介
歯科医師のご紹介
- 日本口腔外科学会認定 口腔外科専門医
医療法人光惠会 口腔外科部長 - 稲田 良樹歯科医師
- 医療法人光惠会の口腔外科を統括する口腔外科部長で、日本口腔外科学会認定 口腔外科専門医。1995年大阪大学歯学部 卒業後、大規模総合病院などで口腔外科医として活躍。医療法人光惠会では各医院を巡回しながら口腔外科を専門に診療を行う歯科医師。
- 日本口腔外科学会認定 口腔外科専門医
- 石田 優歯科医師
- 医療法人光惠会の北摂エリアを主に巡回し口腔外科治療を担当する歯科医師。日本口腔外科学会認定 口腔外科専門医。2009年に九州大学歯学部 卒業後、兵庫エリアの医療センターや大学附属病院にて、口腔外科医として活躍。2021年に医療法人光惠会に入職。
- 医療法人光惠会 副理事長
- 伊原 勝換歯科医師
- 医療法人光惠会の副理事長兼、茨木ひかり歯科クリニックの院長。2006年に大阪歯科大学卒業後、大阪府内の歯科医院で勤務。
虫歯などの一般歯科から子どもの予防歯科、インプラントなど自費診療を中心に幅広い歯科治療を行う。
- 以上の歯科医師3名がそれぞれの意見を出し合い、座談会形式でお答えしています。
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お悩み回答一覧
親知らずは抜いた方が良い?なぜ抜くの?
- 感染源になる親知らずは抜きましょう、と言うことになります。簡単に言い換えれば、害になる可能性のある親知らずは抜きましょう、ということです。特に横向きに生えている親知らずだと、歯の周りに細菌が巣をつくり、しかもそこには歯ブラシが届かず、細菌の除去が出来ないという事になります。 長い目で見ると、ほぼ100%と言ってよい確率で何らかの感染症を引き起こしてしまいます。膿んだ腫れたで済めば良いのですが、命にも関わるような重篤な感染症に発展してしまう可能性もあります。そのような危ない芽は摘んでおくべきですよ、と患者様には説明させて頂いています。
- そうですね。稲田先生が仰られた感染源を無くすという事以外にも、親知らずに隣接する健康な歯に虫歯を作りやすくなりますので、予防目的においても親知らず抜歯を推奨しています。
抜かない方が良い親知らずもありますか?
- あるとすれば、上の親知らずで完全に骨の中に埋もれていて、何も悪い影響が出ない親知らずは無理に抜歯する必要はないと思います。ただし、経過観察は必要です。あと、親知らずがまっすぐ生えていて、しっかり噛み合わせがあっており、歯磨きがしっかりできるケースも抜歯は必要ないかと思います。
- 例えば親知らずの隣の歯が虫歯などで失活歯(歯髄が死んでいる歯)で将来的に破折する可能性があるケース。親知らずが隅に生えていれば、失活歯の代替えとして親知らずを残す場合もあります。
- そういうケースもありますね。大前提として、親知らずの隣の歯が失活歯となり、更に二次カリエスなどになりそうな場合ならば、親知らずは残すべきでしょう。もし隣の歯を虫歯などで抜歯した場合でも、親知らずを代替えとして有効活用できることがあります。親知らずが斜めに生えたような場合でも、矯正などで歯並びを修正できることもあります。ただし、これはあくまでも隣の歯が抜歯になりそうなケースの話で、隣の歯が健全なのであれば、親知らずを残していることで悪影響が出るリスクがあるので、状況を正しく判断する必要があります。
親知らずを他の欠損箇所に移植する事はありますか?
- 親知らずを隣接する欠損箇所の移植に使用するという話しも聞きますが、親知らずの移植に関して先生方はどのような見解ですか?
- 元々抜歯に至る状況のため骨の状態も悪く、また骨と歯を密着させるのは難しいので、移植しても経過は悪くなるケースが見受けられます。
- そうですね、患者さんから強い希望があった場合は、親知らずを失った歯の箇所に移植も対応しますが、予後は良くないですね。何年かでももってくれれば…という気持ちでやってますね。
- やはり一度抜いた歯という事でダメージもありますし、私はあまり親知らずの移植はやらないですね。若い人で目立つ箇所の抜歯など行った際はやりますが、経過は良くないケースが多いです。
親知らずはいつ頃抜いたら良い?
- 個人的な見解ですが高校生~20歳前後が望ましいかと思います。歯根が出来上がると抜歯の難易度は上がります。抜歯にかかる時間や処置中の負担、術後の経過を考えると早めに抜いた方が良いと思います。
- そうですね、若いうちに抜歯した方が麻痺も出にくいですし、その他のリスクも軽減できて、なおかつ治癒も早いです。
- 親知らず抜歯でのリスクも少ないですし、抜きやすく、短時間で抜歯ができる。根未完成歯(こんみかんせいし)なので容易に動きます。一番理想なのは親知らずの根ができるまでに抜歯するのが良いと思います。
- 早いうちに歯医者での検診でレントゲンを撮影し、親知らずの有無や状態を確認することをお勧めします。
1回の抜歯で親知らずを何本抜いたら良いですか?
- 左右の親知らずを1回の治療で抜歯する事はしないですね。
- 抜歯自体は複数本できますが、患者さんの術後負担を考えないといけませんので。左右同時に抜くと、当然左右に痛みと腫れが出ます。腫れはマスクで隠せますが、痛みや開口障害で食事など日常生活に支障が出ます。
- 単日で複数本の抜歯を行うとすれば、左右どちらかの上下なら可能ですね。これらを説明した上でも、どうしても4本まとめて抜いて欲しいという患者さんもおられましたので希望に沿って4本抜歯したケースもありますが、結局「説明通り片方にしとけばよかった」と後悔されることがほとんどです。
親知らずは抜いたら腫れますか?
- 横向きの親知らずで切開を入れるケースではまず腫れますし、抜歯の際の侵襲、つまり切開の長さや骨を削る量、また抜歯にかかる時間によっても異なります。これに体質も影響しますので、腫れには個人差があります。
- どのようなケースでもそれなりに腫れは出ると思って頂いた方が良いと思います。
親知らず抜歯後どれくらいで治りますか?
- 痛みが無くなり通常どおり食事を摂れるようになるのが約1週間、抜いた箇所に食べかすが詰まったりすることが無くなるのが長くて2~3ヶ月くらい。若いうちに抜歯を進めるのはこの治癒期間が短いからというのもあります。
親知らずを抜歯するのにどのくらいの費用が必要ですか?
- 3割負担の患者さんで、薬代や再診料含め横倒しの水平埋伏を1本抜歯で4000~5000円ほど。これに上の親知らずの抜歯も同時に行えば1500円プラスされる感じです。
- 抜歯前にCTを撮影する場合は+3000円ほど費用が必要です。
- CT撮影は親知らずの角度や形、神経との距離を正確に把握できるので、安全な親知らず抜歯には必要だと思います。術後に親知らずの歯根が残っていないかのチェックもできます。
親知らず抜歯後、痛みが引かない場合の対処は?
- 抜歯に伴う痛みで、感染症などが見受けられない場合は痛み止めの薬を処方し、痛みが治まるのを待つしかないですね。
- ドライソケット(抜歯した穴の骨が露出したままになり、骨に細菌感染が起きている状態)も考えられますし、ヘルペスなどによる異常疼痛も考えられますので、抜歯後の消毒や経過観察には必ずご来院して頂くようお願いしています。
- 抜歯後のご来院頻度はお薬(痛み止め)が無くなったら経過観察にお越し頂くようお願いしています。その際に痛みが引かない場合はお薬を追加で処方したり、ドライソケットの有無など確認させて頂きます。
- うがいをしすぎてドライソケットになるケースもあるので、激しく何回もうがいをするのは控えた方が良いでしょう。