全く関係の無い話から始めさせていただきます。
昭和の名俳優に、松田優作という人がいました。個人的には大好きな俳優さんで、彼の出演したドラマや映画などはほとんど目を通したものですが、残念ながら「ブラック・レイン」という映画の撮影終了後、若くして亡くなってしまいました。
その「ブラック・レイン」のクライマックスシーンは大阪梅田の阪急百貨店で撮影が行われていた事をご存知の方も多いのではないでしょうか。
ご存知の方は同世代とお見受けしますが(笑)。
名優と呼ばれた人が全てそうであるように、松田優作にも多くの伝説、逸話が残されています。
その中に「役作りで痩せた顔にするために奥歯を抜いた」というものがあります。
どうやらこれが発端で「歯を抜くと小顔になる」という都市伝説が生まれたのかと想像します。
すでに都市伝説と言ってしまいましたが、歯を抜くことで直接顔が小さくなったり、頬が痩せてしまったりすることはありません。
まして親知らずは埋伏と言って骨の中に埋もれていることが多く、それを抜いても骨格が変わるわけではありませんので、当然顔の形も変わりません。
むしろ抜いてしばらくはわずかにでも腫れが残りますので、逆効果とさえ言えるでしょう。
とはいえ腫れが残るのはごくわずかなので、見た目で分かるほどとは思えませんが。
松田優作のように奥歯がなくなった場合であれば、噛めなくて筋肉を使わなくなる事で筋肉が痩せる、もしくは食事量が減る事で痩せる、歯が無いことで頬を吸い寄せて痩せて見える、などの効果はあるかもしれませんが、けっして健康的とは言えません。
松田優作に憧れてはいますが、これを真似することは絶対にお勧め致しません。
繰り返し書いてきましたが、親知らずは感染症という病気の原因になるから抜くべきなのであって、美容目的やまして健康を損なうために抜くものではありません。
感染症を予防し、健康的な生活を送るために、必要な場合には早々に抜歯を受けていただければと思います。
口腔外科専門医
稲田 良樹
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