前回の項で、「これこれこういう傷口だから多少は血が滲みますよ」などという内容で書きましたが、その傷口を具体的に示してみたいと思います。
図は、実際に私が処置した直後の傷口(創部)の写真をイラスト化したものです。
詳細を以下に説明します。
メスで切開した粘膜を縫合しています。
通常、第二大臼歯(7)の後方(遠心)と外側(頬側)に切開を入れます。
術者によっても変わりますが、大体2~3カ所を縫合します。
親知らずの直上の歯ぐきは切除してでも穴を開けるようにします。
塞いでしまうと中に細菌が残ったり滲出液や血液が溜まったりして、感染や腫れの原因となるためです。
モノクロのイラストなので分かりにくいですが、実際には緑色の線が入っています。
たかが数センチの細いシリコンチューブですが、このおかげでかなり腫れを抑えることができます。
ここで、ペンローズドレーンについても少し説明をしておきます。
基本的には術翌日に除去するのですが、痛みなく除去できるように細いものを使い、しかも糸で固定などは行っておりません。
このため傷の状態や筋肉の位置などにより、術当日の夜に取れてしまうこともままあります。
しかし術直後の数時間で滲出液や出血はほとんどおさまるため、ドレーンの役目は十分に果たした上でとれてしまうことがほとんどですので、ドレーンが取れたことで腫れがひどくなることはまずありません。
ごくまれに、ドレーンが傷口の中に入り込んでしまうことがありますが、傷口に隠れてわからない場合にはレントゲンでドレーン残留の有無を確認できます。
このため術後の経過観察の際、ドレーンが傷口に見当たらない場合には自然に取れたかどうか確認し、明らかに取れた場合はそのまま洗浄するだけですが、わからない場合には傷口の内部を確認したり、レントゲンでの確認を行なったりします。
ただここでお願いですが、このイラストみたいになってるかどうか、鏡などでまじまじと見るのはできるだけ控えてください。
口の中の傷を治すためには唾液で湿っていることも重要な要件になりますので、開けて眺めて乾燥させると治りを遅らせてしまうことにもなりかねません。
この点をよくご理解いただけますようお願いいたします。
口腔外科専門医
稲田 良樹
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