前回の記事で「感染症になっている、または感染症になる可能性が高い親知らずについては、抜歯する必要があると言えます。」と、言いました。
では、どのような親知らずが感染症になる可能性が高いのかを今回の記事で説明します。
写真は典型的な横になって埋もれた親知らず(埋伏智歯)です。
「埋もれた歯なら感染しないのでは?」とよく質問を受けますが、拡大した下記写真の丸で囲った部分をよく見てください。
親知らずの上を、骨が完全に覆いつくしていないのがお分かりいただけると思います。
こんな隙間があれば、手前の歯の歯周ポケットから簡単に細菌は入り込みます。
針しか通らないような隙間でも、細菌にとっては大きなトンネルのようなものです。
わずかな隙間から入った細菌が感染症を起こし、痛みや腫れを訴えて受診される患者様も少なくありません。
そして、歯の周りには元々歯を作っていた皮の袋が残っていて、細菌はこの隙間に広がります。
さて、親知らずの周りに入った細菌をどうやれば取り除くことができるでしょうか?
歯ブラシなどで物理的に清掃することが不可能なのは写真を見ればお分かりいただけると思います。
洗口剤、消毒液などで化学的に清掃するのも難しいですし、こんな袋に入り込んだ細菌を死滅させるような物質が体に無害なはずはありません。
要するに、親知らずを置いたままで細菌を取り除くことは不可能なのです。
従って、感染症を起こすことが予想される場合には、抜歯するしか感染症を防ぐ手立てはないのです。
また、一見真っ直ぐに生えていても、後ろの方が生えきっていない、ちゃんと噛み合っていない、歯並びからずれて生えている、などの場合も清掃が難しくなるため抜歯をお勧めすることがあります。
抜歯、しかも親知らず、などと言うと恐ろしい事のように感じるかも知れませんが、放置して起こる感染症の恐ろしさはケタが違います。
親知らずをこのまま置いていても大丈夫かどうか、不安に感じられる方は是非一度ご相談ください。
抜歯が必要な際には、かかる費用や時間についても詳しくご説明いたします。
口腔外科専門医
稲田 良樹
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