親知らずの抜歯の際、切開が必要になる事はよくあります。
以前までの記事でも述べましたが、簡単なものでも親知らずの向きや周囲の骨の状態によっては切開が必要になります。
歯肉など粘膜に切開を入れると、傷口付近だけでなく、頬や顎の下辺りまで腫れが現れます。
腫れの度合いにも個人差があり、骨を削る量など侵襲の大きさ、性別、年齢、皮膚の柔らかさ、体質などで変わります。
おおまかに言えば、侵襲が大きく、女性で、若く、皮膚が柔らかい人ほどよく腫れます。
この事については以後の記事(親知らずを抜歯するのに適切なタイミングは?)で改めて述べる予定ですのでここでは大事な事だけ述べておきますが、「若い内に抜歯するデメリットは唯一、腫れやすいという事だけ」です。
さて、では腫れが強いと痛みも強いのか、という問題になりますが、これについてはあまり関係がありません。
上に述べたとおり、腫れの強さと痛みの双方に影響するのはせいぜい「体質(炎症反応が強く現れやすい人)」ぐらいなので、例えば十代で早期に抜歯が必要な方などは、相当量の骨を削って腫れが強く出ても、ひどい痛みが出る事はほとんどありません。
痛みが強い場合には、口を開けたり飲み込んだり、あるいは話をしたりという口の機能に支障が出る場合があります。
親知らずの近くには口を閉じる運動をつかさどる筋肉(咬筋、内側翼突筋)がありますので、抜歯後の炎症によりこの筋肉を動かす事で痛みが生じる事があります。
また炎症だけでなく、親知らずが内側(舌側)に寄っているとすぐそばに内側翼突筋があることも多く、このような場合では抜歯後に口が開きにくい、飲み込むと痛い、喋りにくいなどの症状が出る事があります。
従って腫れが強く出ても話をしにくいとは言えませんが、一時とは言え見た目上には問題が生じますので「会話はしたくない」という方が多いのは事実です。
ただし令和2年現在に関しては、普段からマスク着用が励行されていますので、むしろ今の内に抜歯しておこうと受診される患者様も少なくありません。
抜歯後の痛みや腫れなど、いわゆる不快事項についても抜歯前の説明にてお伝えしておりますので、不安な事や心配な事については遠慮なくお伝えください。
口腔外科専門医
稲田 良樹
診療時間/10:00~13:00・15:00~20:00
休診日/祝日